プロ野球の醍醐味でもあるホームベース上での攻防が混迷を極めている。その原因は言わずもがな、今季から新たに導入された「コリジョンルール」だ。
ご存知のファンも多いかもしれないが、同ルールについて今一度、確認してみたい。
◆コリジョンルール
本塁突入による危険な衝突(コリジョン)を回避するため、2016年から導入。ボールを持たない捕手の本塁ブロックが禁止(走者も捕手への体当たり禁止)され、ホームベースを空けて(具体的には走者の走路など)おかなければならない。コリジョンルールに伴い、今季から本塁でのクロスプレーにもリプレー検証が導入。※詳細は右記を参照(http://npb.jp/npb/2016rules.html)
今季、これまでに特にクローズアップされたのが5月11日の阪神対巨人(甲子園)での、3回表・二死二塁の場面だ。阪神の先発・メッセンジャーから脇谷がセンター前に鋭い打球をはじき返すと、二走・小林は一気に本塁へ突進。それを中堅・大和が矢のような返球で生還を見事に阻止したかに見えた。だが、巨人・高橋監督がビデオ判定を要求すると一転して得点が認められた。審判団の説明はこうだ。「リプレー映像の検証の結果、コリジョンを適用してセーフとします」。当然、納得できない阪神・金本監督は猛抗議したが「リプレー検証後の抗議はできないのでお帰りください」と言われるだけの釈然としない説明にとどまったという。
後日、雑誌でコリジョンルールについて審判団が本音を語った記事を目にした。「『あれは、あのままアウトで良かったんじゃないの』という審判も確かにいます。それは包み隠さずに言います。全部が全部、同じとは言いません。ですから、判断なんです。なるべく、審判全員が同じ基準になるように、縮めてはいる」。なるほど、やはり審判団自身もルール解釈を統一している段階で、いまは“試用期間”とならざるを得ないのだろう。
ただ、個人的には賛否両論があるにせよ現段階では一定の理解(どこの世界にもルール解釈の歪曲はあるが、ことスポーツに関しては一刻も早い解決を願いたいが・・・)はしたい。一方でルールマンである審判には“試用期間”であれ、もっと毅然とした態度で説明責任を果たす必要が求められているのは言うまでもないだろう。今回の問題ではその点における過不足さが、「コリジョンルール」における無用の衝突を助長する皮肉な結果を招いているのだから―。